絶対音感少女

長女は絶対音感を持っているそうだ。
子どもの頃は琴を習ったり、吹奏楽部でユーフォニュームを演奏していた。
以前家族でカラオケに行ったときは歌の上手さに感心した。歌う曲は僕の知らない難しいボカロ曲だった。

先月、奥さんが手術入院したときのこと。
僕が午前中会社を抜けられないので、行きを長女に付き添ってもらった。
僕が昼過ぎに病院に着いてから、奥さんは胸部のMRI撮影するために部屋に入って行った。
僕と長女は部屋の外の椅子に座って待っていた。

しばらくすると長女が笑いをこらえている。
どうしたのかと訊くと、MRI室でメロディオン(鍵盤ハーモニカ)が鳴っていると言う。小学生が音楽の授業で習うあの楽器だ。
たしかに聞き覚えのある音色が断続的に聞こえてくる。医療機器の作動音か何かだろう。長女は正確にドの音とか、今度はミの音とか言い当てた。

医療室で誰かがメロディオンを吹いている光景を思い浮かべたらこっちまで可笑しくなった。
2020.1.27(月) 雨