予知能力が活かせずに青切符

先週の火曜日は春の全国交通安全運動初日だった。会社勤めをしていたときは環境安全部門から全社員へ注意喚起が行われていたし、そもそも僕は職場で安全常任委員を任されていたからこの種の情報に敏感だった。

現在無職の男はすっかり油断していた。朝、奥さんから腕時計の電池交換を頼まれた。商店街に親切な時計店があるので午前中に自動車で行った。市営駐車場に車を停めて、電池交換をしてもらってから駐車場まで歩いて戻る途中、何となく気配を感じて僕は後ろを振り返った。通りを走っているパトカーが見えた。思えばこれが僕の予知能力だったんだろう。

駐車場から車を出して、商店街を抜けて信号待ちしていると、後ろから警察官が小走りに近づいてきた。まさかと思いながらも窓を開けた。横に立った若い警察官は丁寧な口調でさっき横断歩道前にお婆さんが立っていたにもかかわらず、僕が停止をしなかったことを告げた。「見落としたんですよね。でも横断歩行者妨害で青切符になります。この先で車を寄せて停まってください。」

商店街の通りは平日の昼間でも人が多かったし、お年寄りはいたるところで歩いていたので注意して走行したつもりだった。横断歩道前で立っているお婆さんにはまったく気付かなかった。警察官は僕の車にドライブレコーダーのステッカーが貼ってあることにも当然気付いているはずだ。僕は弁解しても時間の無駄と悟って素直に応じた。警察官は始終丁寧な口調で事務手続きを済ませた。僕は渡された振り込み用紙を持って近所の郵便局で違反金９千円を支払った。

ここ最近、不運と思える出来事に遭遇してなかった。この程度で済んだのなら幸いというべきか。でもあの商店街にはもう車で行かない。

 2021.4.14（水）曇り